一般的な大学生の平均生涯賃金は3億円ですが、東大卒の平均は大体4億5000~6000万、我が子我が孫を浪人させても東大へ行かせよう!

 興味深い記事が載っていました。高知土佐高校野球部OBで東大野球部の監督をながくして、現在東京で複数の進学塾を経営している方のお話が載っておりました。高知では有名な方です。

 

「慶応は本当に嫌いですね」東大野球部のスカウトが語るスポーツ推薦も内部進学もない東大の努力「夏休みは高校球児に勉強合宿で口説く」

 2017年、日本ハムからドラフト指名の宮台康平投手。じつは東大野球部は高校1年当時から宮台に注目していた。そんな東大のスカウト活動とは?東京六大学野球リーグの選手たちの出身校をみると、甲子園常連校や強豪校がズラリと並ぶ。早稲田や法政、立教、明治などはスポーツ推薦で入学する野球エリートが多いからだ。慶應はスポーツ推薦を実施していないが、強豪として鳴らす慶應高校をはじめとする内部進学組の安定感が心強い。こうした私立5校と比べると、スポーツ推薦も内部進学もない東大は断然に不利だ。しかし、これをはねかえそうと、東大野球部OB会では独自のスカウト活動を展開しているという

「東大合格当日に、湘南高校の宮台くんに会いに行った」

 東大野球部は弱い弱いとよく言われるが、いったいどのくらい弱いのか。2013年から2019年まで、監督として東大野球部の指揮を執っていた浜田一志は、こう言う。

「東大と他5大学の戦力差は、おそらく20倍あるでしょう。東大を除く5大学からプロ野球のドラフトで指名されるのは、毎年10人ほど(社会人経由も含む)ですから、各大学が2人としましょう。それに対して、東大からプロ入りするのは、10年に1人、つまり1年に0.1人にすぎません。この人数の差が大学の戦力の差を表していると考えると、基準としてわかりやすい」

 東京ヤクルトスワローズの宮台康平(2018年卒部・湘南)は、今年7月に一軍のマウンドに上がって話題を呼んだが、それも東大出身のプロ野球選手が超希少だからこそ。宮台の前の該当者となると、北海道日本ハムファイターズにドラフト9位で入団した、松家卓弘(2005年卒部・高松)までさかのぼらねばならない。

 だが、松家から13年ぶりとなるプロ級の選手を、じつは東大はただ待っていたわけではなかった。

「宮台くんは、中学生の頃から話題になっていた左腕の好投手。文武両道で知られる湘南高校に進学したと聞いて、同校野球部の川村靖監督に電話で問い合わせたところ、学業成績も優秀とのこと。将来は東大野球部に来てくれると期待していました。2014年の東大の合格発表日には、湘南高校に宮台くんを訪ね、東大野球部の入部届にサインをしてもらいましたよ」

灘や開成などの超進学校は“スカウト対象外”

 有望な選手に早くから目をつけ、在籍する高校の指導者を通じて東大野球部への入部をプッシュするのは、まさにスカウトである。浜田は2006年からこの活動に関わり始め、監督在任中も含め、現在に至るまでも精力的に取り組んでいるという。

「東大野球部のOB会の中で、野球部員をもっと補強しようという声が出たのが、2006年のことでした。当時、部員数が1学年10人前後だったこともあり、部員数を増やし、同時に野球が上手い子をもっと入学させようということで、スカウト事務局が作られました。といっても、大学公式のものではなくOB会のボランティア活動です。東大のスカウト=入試対策でもあるので、学習塾の経営をしている私が適任だろうと、OB会長のご指名を受けたわけです」

 浜田は1983年に土佐高校から東大に進み、4年時には野球部主将を務めた。大学院卒業後は、新日鉄に入社。1994年に独立し、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」Ai西武学院を創業。2013~2019年の東大野球部監督時代は、通算9勝をあげている。

「2007年から、スカウトのために各地の高校野球部を回るようになりました。訪問先は、基本的には、本気で甲子園を目指している地方の進学校ですね。1~2カ月に1校のペースで回り、およそ10年程度で47都道府県をコンプリートしました。最初はツテなんてありませんから、飛び込みの電話から始まります。『東京大学野球部のスカウトの浜田と申しますが、文武両道の高校とお聞きしているので、一度練習を見学させてもらえませんか』と直接学校の事務室に連絡するんです。スカウト活動の予算はほぼないので、『訪問した際、文武両道について講演する。その代わりに、旅費を出してほしい』という交渉もしましたよ」

 高校訪問で細やかな東大受験対策を指導しているわけではない。浜田にとってのスカウト活動を端的に言うと、「東大受験のモチベーションを高める全国規模の活動」なのだとか。

「東大受験なんて考えてもいない子に、東大に行きたいと思ってもらうことが主眼ですので、黙っていても東大に多数入学してくる灘や開成などの超進学校は対象外です。秋田、静岡、東筑彦根東、米子東など甲子園出場経験のある地方の進学校を訪問して、選手と話すケースが多いです。そのような学校の野球部員はみな文武両道を目指していますから、『東大野球部で文武両道のテッペンを目指しませんか』と声をかける。やはり、テッペンという言葉は男の子の心理をくすぐりますからね。さらには、『慶應などで控えになるより東大でレギュラーになって、初優勝の立役者にならないか』などと口説きます」

「現役東大生が家庭教師に」夏休み2週間の合宿勉強会

 こうした地道な訪問活動は、高校野球界で話題を呼んだ。やがて2013年に監督に就任する頃には、高校野球関係者の人脈もすっかり広がり、各地の高校から有望選手の情報が集まるようになっていた。

「こちらから声をかけなくても、高校の先生から『勉強ができる野球部員がいますよ』『今度入ってきた1年生部員、なかなかいい子ですよ』といった連絡をもらえるようになりました。ただ正直言うと、実際に見てみて、その子が野球が上手いかどうかは私には関係ない。それよりも、本気で甲子園を目指している高校からの、最初の東大野球部員を作ることが重要なんです。多くの高校生は先輩の進路を参考にしますから、東大野球部というルートを一度作ると、後輩も東大を目指すようになるのです」

 浜田によれば、高校球児は大きく分けると、プロ野球のドラ1候補、U-18代表、甲子園経験者、甲子園まであと一歩組、1回戦ボーイ(1回戦負け)というピラミッド型になっている。東大野球部のメンバーは1回戦ボーイが中心であるため、浜田はここに強豪チームの血を安定的に入れる仕組み作りにこだわったのだ。

 監督としての浜田のスカウト活動はさらに熱を帯びた。とっておきの小道具としては、スクールカラーである淡青色に「東大」と白く染め抜いたハチマキ。「これで偏差値が5上がるよ」と渡せば、東大受験のモチベーションがグッと上がるという。

 また、夏休みには高校球児を集め、東大野球部のグラウンド近くで2週間の合宿勉強会も実施。昼は予備校で学習、夜は現役の東大野球部員が家庭教師のように密着するという強力なバックアップ体制だ。勉強会とは別に、高校1~3年生を対象とした練習体験会も開催しており、これも優秀な球児たちのやる気に火をつけるのだという。

「そのような活動を行なっていくと、毎年8月には東大受験予定者リストができあがります。各高校から情報を寄せられた有望選手や、勉強会と練習会の参加者をまとめるとおよそ200人ほど。そこから20人前後が東大受験に至り、そのうち合格するのが3、4人ですね」

慶應は、この点では本当に嫌いですね」

 目をつけた200人中、20人しか東大を受験しない歩留まりの悪さは、他大学との競合によるもの。

「私が高校生と直接メールのやりとりをしたり、間接的に高校の監督さんを通じてメッセージを伝えてもらったりして、東大受験のモチベーションを上げていくわけですが、途中で横取りされるんですよ。特に慶應はもう、この点においては本当に嫌いですね。文武両道の公立進学校には慶應の指定校推薦枠があって、そちらに流れるケースは多い。受験で合格するかどうかわからない東大よりも、指定校推薦で100%入れる慶應を選んでしまうわけです。また、東大を目指して勉強をしてはいても、最終的には確実に合格できそうなランクの大学を受験する子もいます」

 そうやって他の5大学にも有望選手を送り込んでいる点で、浜田のスカウト活動は両刃の剣とも言えそうだが、本人は意に介さない。神宮球場で対戦した際、「高校時代はお世話になりました」と他校の選手が挨拶しに来るたび、自分のスカウト活動は、東大だけでなく、東京六大学リーグ全体に貢献しているとの思いを強くしていたという。

東大合格への戦略「7000時間勉強すればいいんですよ」

 だが、浜田の持論としては、戦略さえ知っておけば、東大受験と野球という文武両道を達成するのはそこまで困難ではない。

「東大に合格するには、データに基づく戦略があります。東大合格者たちの勉強ぶりを分析すると、英語、数学、理科、国語、社会の5教科を3年間で、授業も含めて7000時間勉強すればいいんですよ。高校3年間は2万6280時間ですから、高校生活の3分の1弱を勉強にあてるだけです。ふだんの授業も含めて1日約8時間勉強すればいいので、不可能ではないでしょう。浪人している子は単純に7000時間に満たなかっただけです。また、野球にマジメに取り組んでいた子は学力も伸びやすいという相関関係があります。勉強に必要な背筋力と動体視力を野球は養います。背筋力は姿勢を良くし、動体視力は速読につながりますからね」

 そして浜田のもうひとつの持論も紹介しておこう。現役で他大学に入るより、浪人してでも東大に入ったほうが、金銭面では断然トクなのだとか。

「現役での東大合格に不安を持ち、浪人に対して後ろ向きなケースでは、親御さんも含めた三者面談を行うこともあります。説得の言葉は、例えばこうです。一般的な大学生の平均生涯賃金は3億円ですが、東大卒の平均は大体4億5000~6000万。将来の1億5000万円の差を考えたら、予備校代の100万円は投資だと思いませんか。東大野球部OBの就職は、どこに行けるかではなく、行きたいところに行くだけですよ、と」

 高校球児に夢を語りつつ、しっかりと大人の現実を見せながら熱血スカウト活動を続ける浜田である