バウチャー不要の文科相意見に賛成


 九月二十六日の渡海新文部科学相の記者会見で「教育バウチャー制度は不要」との考えが表明され、胸をなで下ろした。

 この制度は行政が保護者に学校の授業料に充当できる一定額の利用券(バウチャー)を支給、児童・生徒が自ら選択した学校に利用券を渡し授業を受ける仕組み。イギリスを中心に教育の自由化と平等の観点と、市場原理の導入を目的に導入された。子どもたちに自分の行きたい学校に義務教育から行かせ、学校間で競争させようとする制度である。しかし、結果として競争原理が働き過ぎて学校間格差が予想以上に広がり、多くの問題を提起している。

 わが国は現在、義務教育は公立の場合、子どもは自分の住んでいる地区が校区となる小学校に入学し、大体、中学にも一緒に進学する。それは子どもたちばかりでなく、保護者や学校を含む大きな地域共同体をつくり上げることにつながり、防犯面の効果や地域社会を発展させる活力となっている。

 しかし、もし「教育バウチャー制度」の下にどこでも自由に学校が選べるとしたら、学校の間に必ず人気、不人気が生じる。そのことによってわが国特有の地域コミュニティーは衰退し、大災害の時などに住民のつながりの弱った地域は“孤立”する結果を招くかもしれない。

 公立校教職員の努力で現在、ようやく地域に根差した学校づくりが実を結び始めたところだ。そこへ格差を学校にまで広げ、地域崩壊にもつながる教育バウチャー制度を導入するのは問題で、不要論には全面的に賛成だ。

 【小笠原隆政=52歳・学習塾経営、高知市





10月1日高知新聞朝刊 読者投稿爛「声」に掲載されました。