私立中学受験に思う

 私立中学の入試を来週に控えてか、大手進学塾の広告が目に付き始めた。保護者の方からインフルエンザで塾をお休みするので、振り替え授業時間の話をしていて「先生の塾はこんな事が気軽に言えるし、すぐに振り替え時間も、出来るだけ都合のいい時間に替えてもらえるのがうれしいです。」とのお話だった。以前の塾は欠席は自己責任で病気をするのが悪いような言い方をされたそうだ。少し驚いたが、人間は病気をするのは当たり前だから、私はこのサービスを当然だと思っている。そして新入生の募集の話になり、生徒さんをご紹介していただける事になったが、その中で中学入試の話が出た。

 「私の持論はハイレベルの私立中学校には、本当に頭のいい子が行くべきだと思っています。誤解があったらいけませんので付け加えますと、受験勉強したら悠々合格出来る,実力のある子が行くべきです。しかし、進学塾の場合ハイレベルの私立への合格率が、その塾のランクのバロメーターのように見られるので、少しでも可能性がある子には受験テクニックを叩き込み、がり勉させて合格させようとします。合格するかしないかは受けて見ないとわからない、マグレで通れば儲けもの!てな調子です。親も少しでも可能性があるのなら、じゃ特別講習お願いします、と言って子供に無理をさせます。
 お金も要ります。精神的にも肉体的にも生徒によっては、ぎりぎりまで追い込まれます。合格してもその学校では悠々合格した子とそのぎりぎり入った子では、実力差は歴然としていて分かる子に勉強を合わせている学校では、ぎりぎりの子はだんだん勉強がわからなくなりがちです。だから親はまた塾に行かそうとします。でも、子供は合格することに全エネルギーを使っているので、塾も家庭教師も受け付けない。英語の場合は特に分からなくなります。以前私の英語塾にそんな生徒がイヤイヤ来て私がまずやった事は、精神的なケアーでした。話を聞く、心を知る。こんな子に勉強なんてかえってその時は毒になります。時間がかかりましたが少しずつ自信を付けさせ、何とか授業について行けるようになりました。これは一例ですが、ぎりぎりで入ったりすると大変なんですね。 
 逆に、進学できなかった場合、子供さんには大なり小なり心の傷になり、ずっとその気持ちを引きずっていくようになります。人によっては一生忘れない!と言っております。「勉強してもだめなんだ、もう勉強なんかやーめた。」と子供心に決心し全く中学校で勉強しなくなる子もいます。親はそういう気持ちがわからないから、「私立中学を受験した子供が公立中でこんな成績を取る訳がない!教師の教え方、環境が悪いんだ!だからどうしても私立に編入させなくては!!」となり、悪循環の繰り返し。逆に多くの優秀な子達が水を得た魚の如く勉強し、悠々と私立ライフを過ごしてをいるのも事実です。

 極端な例かも知れませんが、私立受験が悪いと言っているのではありません。受験が終わってその後の事も考えるべきだ、と言っているんです。だから私はまずは基礎学力をしっかり付ける事にこだわっています。小学生の時はこれから生活して行く上で、大変大事な基本的な事を多く学ぶからです。例えて言うならば、みんな走る事は出来ますよね、でも競技に出られるのは普段鍛えている人です。その中で一位もいればビリもいる。さらにその中で、国体に行ける人もいればオリンピックに行く人もいる。同じように訓練しても結果は人によってちがいます。私が教えているのは、言わば一番大切な走り方の基本なのです。基本さえしっかり固めていれば、どのような訓練にも応用が効きます。しかし、訓練したからと言ってみんなが国体やオリンピックに行けるわけではありませんよね。能力、才能、努力が大きく影響してきます。でもわが子はひょっとして.....なんて思うのは親心でしょうか?...」と言うようなお話をした。良くわかってくれたようで

 「そうですね、親は先のことなど余り考えず、合格したらその後のことはその時考える。と思っているでしょうね、大変なのは子供本人ですもの。実は私も小さい頃優秀な兄と比べられて大変嫌な思いをしました。兄は私立へ行きましたけど、母は私をなぜか私立には行かせなかったです。母は先生がいま言われたような事を、分かっていたのかも知れないですね....。ありがとうございました。」

 自分の子供がかわいく人より勝っている、と思いたいのは親としては当たり前。それに伴う惜しみない愛情を注ぎたいのも親心。でも人間としての躾をするのは親の責任であるように、能力や才能について最終判断をするのは親の役目でしょう。
 子供を変えたいのなら親が変わるのが最大の近道です。子供に勉強させたいのなら親が勤勉になること。子供にテレビを見せずに勉強させたければ、親がテレビを見ない事です。すべて他人任せにするのではなく、生活習慣、学習習慣など家庭でできる事は家庭で済ました上で塾に預ければ、その効果はずっと大きくお子さんのためになるでしょう。