映画 オッペンハイマー

 やはり難解な映画だった。だからアカデミー賞を取ったのかもしれないと思ったのである。あまり理解できなかった自分が悪いのかもしれないが、一科学者が研究の結果でとんでもないものを作ってしまい、そのために人間的な良心の呵責にさいなまれて、世間の評価とは逆の方向に向かってしまう話ではあったが、途中のプロセスがやはり難解だった。それが実際に使われて多くの人を死に追いやってしまった現実は、彼を一生苦しめたのだ。

 今でいえばAiである。これはきっとすごい化け物になるだろう。何が本物で何がそうではないかが、人類自身が分からなくなってしまうのである。後10年も経てばこの地球上に、Ai関連物があふれているに違いない。それは紛れもなく本物ではないので、それを見抜くAiがまた存在し本物でない物が嘘でなくなり本物のように存在しながら、本物のように本物ではない物が拡がってゆくのである。自分で書いていて何が本物なのかが分からなくなってしまった。

 オッペンハイマーの時代にもしAiがあったら、やはり偽物の原子爆弾が存在していて本物の戦争に使われたに違いないだろう。絵画ではないが偽物が出て始めて本物の値打ちが上がるような話を聞いたことがある。抽象的な偽物から具体的な偽物までAiが制作を可能にするようになると、本当に世の中はカオス状態で混乱するだろう。書いている私がAiにもはや混乱させられてしまっているようだ・・・