心の点数

    早いもので今年も2週間あまりとなってしまった。何とか「無事千秋楽」を迎えられそうである。この「無事千秋楽」と言う言葉は、20代の頃友人のおばあさんから茶道を5年ほど習っていた時に、12月になれば床の間に掛かっていた掛け軸の言葉である。若いみそらで私はあわただしい俗世間から一時であったが畳の上に正座し、チリチリという釜の湯が沸く音を聞きながら、抹茶をたしなんでいたのである。
       ご存知の方もおいでであろうが、茶道には男手前と女手前がある。女性の先生だったが男手前を厳しく教えられた。普段は少し背中が曲がって歩いていた先生が、お手前の時には背筋がピンと伸び、すごく男性的に見えたのを覚えている。「茶道くらい知っておけば後々役に立つかも知れない。」と思って始めたが、これがなかなか大変、一通り覚えるのに10年掛かるということだったが、その先生の人間的な魅力もあり、気がつけば5年も習っていたのである。30近くになり、仕事も忙しくなり通えなくなって辞めてしまったが、「日本人の心」みたいな物に触れられた気がする。

      教育基本法が新しくなって、「愛国心」とか「人の道」とかを教えそれに点数をつけるらしい。どうも良く分からないが、心の度合いに点数など付けられる訳はなく、自然とナンセンスな事になって消えていくのではないだろうか?

      ごみを捨てたり社会的ルールを守れない日本人が多いのは、教育が悪いと考える事は間違いでないと思う。しかし、子供以上に大人も教育すべき事が多いように思う。シンガポールのようにつばを道路に吐いたり、塵を道路に捨てたりしただけで罰金が必要な世界に一度してみるのもいいかもしれない・・と思った。

      でもそれらの決まりは街をきれいにするかも知れないが、人の心まできれいにするとは限らないだろう・・・