塾経営の光と影

        新学期が始まって一週間たちました。新入塾生も張り切って勉強をしています。新年度の春休み中から始めた高校生の教科書別個別指導は特に好評で、学校の授業に即した予習、復習が出来ると喜んでもらっています。私の23年間の経験から出来る事かもしれません。問題に生徒自身に取り組ませ、安易な動画教材やプリントだけの授業はしていません。第一みんな教科書が違うので出来ないのです。

         

時々新たに「塾を始めたいので見学させてください。」との申し出を受けます。わざわざ関東や関西から四国の高知まで見学に来るのですから、単なる物見遊山ではないでしょうから私は真摯に対応しております。今でさえ何とか経営が回っていますが、開校当時は大変だったお話を正直にお伝えします。その話に少し驚かれる方もいらっしゃいますが、私同様開校前はいいことばかり聞いていて、悪い事は余り考えないのです。同じような気持ちで塾を始めている方でも、みんなが成功するわけではありません。ましてやフランチャイズの塾であれば、営業担当や広告塔の先生が悪い事を言うわけがありません!そんな話を信じて失敗した塾長をたくさん見てきました。その責任などそんな方が取るわけありません・・・

         特に私が言う事ははっきり経理的な事で、大丈夫かどうかを判断してもらうのです。熱心さとか本人のやる気とかだけではこればっかりはどうしようもなく、私たちもお手伝いしたい気持ちがあっても、どうする事もできないからです。見込みの営業売り上げから経費を引くとそれが私たちの利益ですが、それでいくら赤字でなかったと言っても果たしてその金額で家族を養っていける金額を捻出するには、一体何人の生徒が必要かと考えてもらいます。家のローンなどあればそれは10万20万では足らない事は事前に分る事です。子供さんに高校生などいたら将来的には、大学進学を考えればかなりの金額が必要な事も明白です。
         仮に50万円の売り上げなら平均生徒単価が15000円で30名以上です。それから教室の経費が必要ですから家賃やロイヤリティー、光熱費、広告費、借入返済金など引くと半分残らないかもしれません。仮に半分残っての25万円で今の家族の生活がやっていけるかどうかを考えてもらいます。30名以上いての計算ですから、開校時は0人ですから赤字経営が続きます。1年間で生徒が一桁なんていう教室はざらです。そうなると教室経費はかなり赤字、そして生活費の毎月のお金は奥さんが一人前の稼ぎでも出来る仕事でない限り、預金は減る一方でしょう。さてどれだけの期間手持ちのお金で持ちこたえられるでしょうか・・・と聞くと皆さん言葉に詰まります。
         またロイヤリティーが一定と言う事は生徒が増えていけば安いかも知れませんが、増えなければずっと重い負担のままと言う事に気がつかないのです。そして30名を獲得する事がどれだけ大変か・・・やってみないと分りません。50名になって手取りがやっと50万になるでしょうか?でも生徒増に伴って講師を雇ったりすると、経費はさらに増えます。ですから私は私の目の届く範囲での生徒数にとどめ、高い利潤率を目指しております。やり方はいろいろあるでしょうが、生徒が100名200名になったとしても、私の手取りはそんなに変りませんから、そうしているだけなのです。先生方の中には講師を何人も雇い経営者になりたい方もおいでのようですが、私はやはり教育者として直接子どもと関わりたいのですね。そして、すべて自己責任で済むようにしています。雇っている先生を休めさせるために、自分が休めないようでは意味がないと考えるのです。何事も100%の成功などはありえませんから、やり方はその塾長の判断でしょう・・・
         I think that small is the Best !

         「でも一度しかない人生ですから、夢をかなえたい気持ちも良く分かりますから、そこらへんは十分ご夫婦でお話になって決断されてください。」とお話して私は説明を終わります。少し青ざめて帰る方もおりますし、営業の話とはぜんぜん違う本当の話が聞けて良かった・・・と言われる人もいます。ただ考えれば誰でもわかる事だし、そんなことを考えずに始めようとする人こそ危ないかも知れません。

         でも塾はすばらしい仕事です、私は「天職」と感じています。本当にやる気で頑張っている人をずっと応援し、互いに励ましあって定期的な勉強会も行っています。

         必要なものはまず自己資金、そしてやる気と家族の理解、最後は子供が好きな事かな、教務力は必須条件です。高校入学試験程度が分からなければ、中学生の分からない子にはまず教えられません・・・でも確かな事は、一人でやるより仲間に入って先輩などに相談しながらやる事が成功への近道と言えるでしょう。


追伸、このブログについて複数の方からお問い合わせのメールや、直接のお電話をいただきました。私は誠意を持ってお答えしたいと思っておりますが、あなた様がお暇な夜8時9時はこちらは繁忙時でございますので、直接のお電話での問い合わせはお控え下さい。このようにこの商売は今までの昼間の仕事とは時間帯は全く違いますし、休み期間中などになりますと特別講座など始まって朝10時より夜の10時まで続きます。試験中になりますと土曜,日曜も休みではありません、一ヶ月のうち完全休暇が2〜3日などざらです。もちろん残業代などもつくはずもない仕事であることも、覚悟されておいて下さい。