この小学英語の教え方ではダメです!

ある方から小学校英語の模擬授業に参加されてのレポートがありました。
それを読み私は、英語教育に関して大変な危惧を感じてしまいました。そのメールのやり取りです。


 「現在指定校で始まっている小学校英語についての模擬授業が披露されました。指導者は英語指導二十数年のベテラン講師、その授業を受けるのは小学生になりきった、私たち講師です。
この英語授業は小5、小6とも年35回あります。そのテーマは毎回変わり、どんどん進みます。文字指導は一切なく、すべてリスニングと会話です。

 第1回目は「あいさつの仕方」です。世界のあいさつについて学んだ後、“Hello, Nice to meet you. My name is ・・・・”などの会話を学びます。先生はこれをほとんど日本語を使わず、英語で身振り手振りで生徒に伝えます。学び終わった生徒は席を立ち、クラスの生徒1人1人と握手やあいさつをして回ります。このような調子で授業が進みます。

 この授業を受けて、私は次のような感想を持ちました。1つは先生側からの感想です。今まで英語に縁遠く、英語の授業などしたことのない先生が3〜4日の研修を受けただけで、こんな高度な授業ができるのでしょうか。特に来年からは新指導要領の前倒し導入がありますから、それだけでも小学校の先生は大変だと思います。

 もう1つは生徒の側からの感想です。小5・6年生ともなれば、すでに思春期に入り、声を出したりすることに対し、恥ずかしがる生徒もいます。このような生徒も積極的に授業に参加し、楽しくやれるのでしょうか。私は、クラスの一部は授業に加わらず、教室の後ろで私語をしたり、ふざけあったりすることにならないのかと感じました。もちろん、明るく指導力たっぷりで英語に堪能な先生がいたら大丈夫なのでしょうが、すべてそのような先生ばかりとは限りません。新指導要領の件も含め、来年度からの公教育はかなり混乱するように思えてなりません。

 来年度は自塾の内部に目を向けるだけでなく、公教育の現場の様子についてもしっかり情報収集する必要がありそうです。」



   「・・・さん、高知の小笠原です。小学英語の模擬授業の様子を興味深く拝見させていただきました。・・・さんが危惧される通りの事が発生するでしょう。現場からは「文部科学省の役人は現場が分かっていない・・・」と今あちこちで噴出している問題と、同じ批判を受ける事でしょう。いや、もっと辛辣なものかも知れません。  

 いわゆる児童をターゲットにした英語教室のやり方です。そこには一応英語のプロ(外国人も)がきれいな発音で教えていますから何とか受け入れられていますが、付け焼刃の普通の小学校の先生がそうはできません。まして英語教室に行っている児童など中にいましたら、恥ずかしいくて辛いでしょう・・・  
 それと中学生の英語が分からない子の中には、そのような英語教室上がりの子が結構いるのをご存知ですか?意外な事なので誰も表面化させませんが、親は良かれと思って小さい時から大枚はたいて英語教室に通わせます。英語で苦労させたくない、少しでも英語が話せるようになってもらいたい・・・という親心からですが、その教室では全く読み書きはしませんから、子どもは英語は大変簡単な勉強と思ってしまって中学に入っても書くこと、読むことに拒否反応を示すのです。中には「僕が知っている英語とは違う・・」などといって授業を受けない子もいるようです。  
 長い事英語の勉強を聞いたり話したりするだけで育った子どもがいきなり書けと言ってもなじめないのですね。過ぎたるは・・・・で早期の英語教育の弊害があります。まさにそれを公でやろうとしているように思えてなりません。  数年後英語嫌いが益々増え、レベルが下がって始めてお役人は気が付くかも知れません。英語のアルファベットの読み書きと、単語の読み方ぐらいは教えないと、中学英語への連携にはならないと思います。英語を公立でかなり教え込みますから、私学ではますます加熱して過去形や過去分詞まで出てきたりするかも知れませんね・・・そんなに急いで教えて何になるのでしょうか・・・」



  過ぎたるは及ばざるが如し・・・私は批判もするが協力もする用意はある。校区の小学校はなぜ私たち英語の分かるものに、ボランティアの要請でもしないのだろうか・・・20年以上の経験で力になりたいのに・・・今のままでは小学校英語は間違いなく頓挫し、おびただしい英語嫌いを作ってしまうだろう。そしてその結果は中学校の英語の先生にまた、大変な苦労を強いる事になりそうである。