ある事件から

  郵政制度悪用事件が厚労省の局長の逮捕まで、広がってしまった。事件そのものは民間会社が広告などをダイレクトメールで送る際本来120円かかる料金を、障害者団体が郵便物を利用する際に利用できる割引制度で、わずか8円で利用できる制度を悪用したものだが、その会社のダイレクトメールを送る団体を障害者団体と認めないと、郵便局もその制度を利用はさせられないわけで、その認めるための証明書を厚労省の役人が偽造していたというのである。まだ嫌疑がかかっている段階だから断定的なことは言えないが、逮捕された厚労省の局長はなんと高知市出身で年齢は1歳違い、近所の進学高校から地元国立大を経て、厳しい競争に勝ち抜いた女性官僚だったのである。彼女が高校生のころ通学路で、私はすれ違ったかもしれない。また地元議員の選挙候補として名前も挙がっていたほどの、才媛であったようだ。
 「罪を憎んで人を憎むな」という言葉があるが、いつもこのようなエリートが起こす犯罪を耳にする時、勉強とか進学校とか大学とか就職とか出世とか、なんだろう・・・と考えてしまう。また立場上優位にありその人が「好意」でやってくれた事だとしても、「好意」に見せかけた「善意」がタダならばその下心はとても大きく大変高いものになり、立場の下の者は「大きな借り」を背負う事を忘れてはいけない。
 ただ温厚な性格の女性として堅実な仕事をしながら結婚、子育てをしつつ仕事への評価は高かったという彼女にも、そういうしたたかな一面があったのだろう。だから女性でありまた地方国立大学出身でありながら、学閥が強い官僚の世界で局長まで上り詰めたのだろうから、結果的にそういう見せ掛けの「善意」を行う者は、必ず墓穴を掘ってしまう。・・・なんともやるせない話である。甘い話には裏がつきものである。
 でも本人は疑いを否認しているというし、職場結婚した旦那も同じ役所の幹部だという。家族は毎日が針のムシロの日々だろう。自業自得かも知れないが、今後の展開を見届けたい。