今年もご精読をありがとうございました。

 年末そして、もうすぐ新年の始まりですが私たちは、これからが追い込みの勝負の時期です。中学入試から大学受験まであるこの時期は、塾にとって大変な時期ですから、私たちの本当の年明けはそれらすべてが終わった、四月一日かもしれません。
 でもその結果を見届けても、ゆっくりもできないのが塾業です。なぜなら、新年度の生徒を募集と準備をしなければいけません。四月になってさぁ募集では、全く新年度には間に合いませんから、早いところは一月明けからもう新年度生の募集を始めます。やはり小学生が欲しいと大手の総合塾では考えるそうで、それにはどうしても、中学受験をやらないと生徒は集まらないと、塾経営者は話します。なぜ小学生を集めたいかと聞けば、中学・高校と来てもらえれば、生徒の募集の手間が省けるというものでした。なかなか合理的な考えではありますが、現実はそうはうまく運びません。経営的な理由で生徒を集めても教務的な実績がなければ、たぶんその経営方針は叶わないでしょうから、本当にむずかしいと思います。また結果が分かって募集をするとなると、中学受験、高校受験そして大学受験は同じ受験でも時期も性質も全く違うものですから、今それらを全部網羅して生徒を集め、それぞれの受験で合格者を出して健全経営している塾は、やはり塾としてはすごいと思います。
 最近少しでもそうした経営戦略を有利に進めてゆくために、塾業界では今、多くのM&Aが行われています。大手が狙うのは進出してない地方で、そこそこの規模で経営されている中小の塾のようです。その地方でゼロから塾を始めるよりは、手っ取り早くその土地に進出ができます。あるいは試験的にその土地で流行っている教室と同じ校区に、少し安い値段で同じような教室を出す戦略から始める、大手塾もあるようです。
 そのような大手の手法と私の塾に対する考え方は、かなり隔たりがあるように思いますが、私が一番違うと感じるのは塾の存在を利益目的に第一に考えるか、生徒第一に考えるかだと思います。塾を始めて生徒が増え講師や職員が増えれば、その人たちの生活を第一に塾長は考えなければなりませんから、利益追求は一番大事な目的になります。でも塾を始めたその塾長は、最初から人の生活の面倒を見るために、塾を始めたのではないと思うのです。違いますでしょうか?
 長編小説「みかづき」のように、最初は損得なしで勉強に困った人がいたから、教えてあげたいと塾を始めた人もいるでしょう。私は常に自分のその原点を忘れず運営してきました。それはあくまで「私、小笠原隆政」がやっている塾に、わざわざお金を出して通って来てくれるのですから、私の責任として私が直接監督指導できる人数の規模でやっている事です。もちろん経費も掛かりますし、責任追行のために月謝はいただいていますが、利益はあくまで生徒第一の後についてくるものだと私は考えます。保護者への対応も進路指導も、常に私が直接しっかりやっています。同じように大手塾でも担任制を取り、私がやっているような方法で運営している塾もあるでしょうから、それはそれで良いと思います。ただ熱い志を持った設立者が元気なうちは、その気持ちをずっと持ち続けて直接指導監督したいと私は思うのです。塾業が他の利益目的の業種とは違うと私が考えるそれが理由です。
 山口県萩の松下村塾も、あの狭い畳の部屋で吉田松陰が直接全員に監督指導していたから、名だたる多くの人材が育ったのだと、私は確信します。そしてもし今現在、吉田松陰が生きていて塾をやっていたなら先見の明のある彼ですから、絶対パソコンを導入して彼の塾で多用しているでしょう。しかし塾を商売として考えても塾業には、決して変えたらいけない事があり、逆に臨機応変に変えていかないと、存在価値までがなくなりかねないのも塾業なのです。塾関係者の皆様も今一度、塾を始めたその原点を思い返してみられてはいかがでしょうか。芭蕉の言葉の「不易流行」という言葉が重く私の心に響いています。
 
 今年一年ご精読をありがとうございました。写真一枚使わない文章だけのブログを今年も続けてまいれましたのも、また30万アクセスを達成できたのも多くの方のご精読のおかげです。来る平成30年が皆様にとりまして素晴らしい年となるようお祈りし、今年の終わりにしたいと思います。1月5日はお休みをいただきまして、気分一新1月12日からお目にかかります。今年一年ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。