なぜ試験で小論文を書かせるのか

 最近大学や専門学校での推薦入試や大学生の就職試験、はたまた社会人の大学入試枠の志望で、小論文対策の指導を求めてくる人が増えてきた。小論文と言えば国語の先生の領域のように思われがちだが、実はそうでも無くていわゆる専門家が教える小論文を書くためのテクニックはすぐに理解できるが、どうも自分の論文の内容が自分で読んで面白くなく、どうしたら論文採点者の心をつかめるだろうか教えてほしいというのである。簡単なようで難しい要望だが、私は「相手の気持ちにテクニックで自分の文章の印象を残そうと思うから、余計に書けないのだ!」といつも戒めている。しかし、ここまで小論文を教えているところは高知ではまずないだろう。
 確かに小論文の書き方のテクニックを学び実践すれば、それなりの文章構成は成り立つのであるが、内容がその構成にもし伴っていなかったらその小論文は、滑稽な内容になってしまう。だからなんで志望する学校は過去問に出るような題で受験する学生に小論文を書かせるのだろう?という事から私は考えさせて言わせて、文章を書かせる。優秀とされている学校の受験生でもそれがうまく言えない時がありまったく書けなくて、小学生のように気持の整理から始めなければならない時もあるのだ。ここで私の小論文の書き方講座を開く訳にもいかないがはっきり言えることは、週2時間ぐらい1〜2か月書き方を学んだところで、そんなに採点者の心に響くような文章は書けるものではないという事である。他の学科が数年かけて勉強し受験に備えているのなら、もし志望の学校で入試に小論文があるのならせめて1年前にはその対策を始めるべきで、ある程度自分で書け始めて習った方がずっとその効果は高い事をここでは明記しておきたい。
 企業や学校でなぜ小論文を書かせるかといえば、小論文で書き手の考え方、性格、さらに学術的な背景そしてその人の思想や見識、生い立ちまでもが読み取れ、普通の試験では分からない受験生の違う一面を発見するために小論文試験は存在するのである。逆にいえば、いくら教科科目で点数が取れても小論文で自分の考えや主張が論理的に説明できない受験生は、知識偏重の底の浅い人間と見られてしまうということだ。そして筆まめでもなく文章になじんでいない者には到底向かない受験科目である事は間違いないし、もしそのような学生が合格しても小論文が得意な学生との競争は、将来不利なものになるであろう。