受験の不条理

 早いもので平成24年度の受験シーズンも終盤になってきた。中学受験はやっていないのだがひょっこり近所のお母さんとお子さんが、中学受験のための作文指導をしてほしいと12月にやってきた。「中学受験のための学習指導は私の教育方針から、やっていないのですが・・・」とお話したら、私のこのブログや新聞投稿などの記事をお母さんが読まれていたらしく、「多分今から受験勉強しても合格はしないでしょうが、子どもは本が好きで作文も好きで、これから文章を書くことは大切だと思うので作文の書き方を少し教えてほしい・・・」と懇願され週に2回、2ヵ月ほど作文指導をしたのである。確かに字もきれいで文章を書くのに抵抗はないお子さんであったが、きめられた文字数の中に自分の考えを的確に書き込む事には慣れてないようで、少しずつ制限文字数にまとめていく練習をしていったのである。やはり読書の好きなお子さんは文章を書く要領の呑み込みも早く、すぐに決められた時間内にしっかりとした内容の作文が書けるようになった。そして受験の結果は「合格」で、一年間大枚はたいて進学塾に通っても合格できない子もいるのに、我ながら中学受験の不条理さを実感したのである。大学受験の小論文対策はやっているが、勉強とは違って最初から書ける生徒は少ない。でも小学生からある程度文章をまとめ読み手の気を引く文章の書き方を知っていれば、中学高校大学でその能力は大きく開花するに違いない。
 ある企業で新人採用をしていた知人が、「どちらに決めようか迷った時は必ず文章を書かせている。なぜなら面接や一般教養試験では見えない、能力が見えるときがあり決めやすい・・・。」と話していた。上手な文字で書く必要はなく、丁寧できれいな文字で読みやすく書いていて内容もよければ、高評価になるのである。大学生の就職試験なら新聞で出てくる漢字くらいは正確には書けなければいけないだろうし、きれいに書けるのに越したことはないから小学生の下級生のうちは、日本人として「硬筆」は絶対習らわせておくべきである。女の子は必須だ!大人になってどんなにきれいな服やメイクで着飾ったとしても、字が乱筆であれば百年の恋もさめてしまう。だから勉強やまして英語などはそれが終わってからでも決して遅くない。
 しかし、未就学の子どもから計算ばかり急がせて汚い字でも急いで書かせる稽古事が流行っている現在、だから日本人の字が下手になったのかもしれない。やっているときは計算の速さばかりに気が向き、字が乱筆になっていることに親は気がつかないから、小学校高学年になって字のきれいさを気にし始めてようやく、その稽古事が間違っていた事に気がつくのである。でも一度ついた乱筆癖は多分しばらく治らないだろうから、可哀相で罪な話だ。鉛筆の正しい持ち方からきちんと教える書写の時間を、小学校でももっと増やす必要があると思う。