投稿 NHK 土曜ドラマ「みかづき」

  1月から2月に5週に渡って放送された、塾が舞台の「みかづき」についてです。原作は単行本で500ページ近い登場人物も4世代の物語ですが、それをわずか5回の放送で終わらせると知り、きっとドラマは本の内容をかなり簡略した内容ではないだろうかと想像していましたが、そのドラマ作りには時代の流れをよりわかりやすくするように、過去と現代とが劇中で前後する手法で脚本が書かれており、5回の短い放送でも時代の流れや、互いの相関関係がわかりやすくなっていましたから、ドラマはドラマとして大変面白かったですし、少し心を動かされる内容でもありました。

 確か原作は八章に渡って昭和30年代から、現在に至るまでの塾の発展と共に家族模様などが時代背景に絡めて書かれていましたが、その中でも私と同じ名前のベテラン講師が塾の経営方針に異論を唱えて、また講師仲間と待遇改善のストライキをしようとする場面は、原作でもドラマでも大変印象に残っています。

  個人的には主人公二人のシーンで流れる「ダニーボーイ」が、大変効果的に使われていました。特に最終回の終わりに二人が昔を思い出すところでは、特に感動的に使用されていました。もともと原曲はアイルランド民謡で「ロンドンデリーの歌」といいますが、母親が別れた我が子を偲のんで切なく歌う内容の曲で、私は昨年指揮したビッグバンドのコンサートで、テナーサックスをフィーチャーしたアレンジでこの曲を演奏したのですが、こんな感傷的で感動的な気分には至れなかったです。そしてしっとりとしたこの曲とは対照的に次の瞬間、このドラマで音楽を担当した佐藤直紀さんの、ブギウギリズムのエンディング曲が流れて、子どもたちとのダンスシーンがより強くこのドラマを印象付けていまして、何とも憎い演出ですね。

 塾の歴史がテレビドラマになる時代、今年あたり塾長直接指導塾「クレセント」(みかづき)なんていう塾が、あちこちに出来ているかもしれません。

 この評論ブログは、3月5日付高知新聞朝刊読者欄に掲載されました。