両親は東大、僕は日大ですが何か?」 高学歴の親に育てられた子供たちの本音と葛藤
受験情報が溢れ、大学進学も「当たり前」になった今の時代。子供には少しでもいい大学に入学してもらいたいと願う親も多いだろう。ただし、親が超高学歴でも、子供が同じように超高学歴になるとは限らない。そうなった時に、当の子供はどう思うのか――。
都内の塾講師は、「東大や京大など、超高学歴の親に育てられた子供たちが、同等レベルの大学に入れなかった場合、親からの当たりが強くなるケースと、むしろ親よりも“他人の目”のほうがシビアなケースに分かれます」と指摘する。実際に高学歴の親に育てられた人たちに、学歴にまつわるリアルな思いを聞いた。
「もう勉強したくない」と関東を脱出
同志社大卒で大手メーカーに勤務する30代女性・Aさんは、父親が一橋大卒で大手メーカーに勤務、母親は津田塾大卒で大手金融機関に勤務と、ともに高学歴の両親の元で育った。とくに母親からは、幼少期から難関大進学を意識した発言が繰り返され、嫌気がさしていたという。 「小学生の頃から『あなたの将来を考えて』というフレーズで塾に突っ込まれ、中学受験をさせられました。私に選択肢はありませんでした。父方は旧帝国大出身者が多く、父も国立大を望んでいたし、それが母のプレッシャーになっていたのかもしれません。ただ、私はそこまで勉強ができるほうではなかった。結局偏差値55ぐらいの、中堅どころの私立中に行くことになりましたが、超進学校ならともかく、真ん中辺の私立中って、行った意味があるのかどうか、正直今でも謎ですね。 母も、その私立中が学力的には『微妙』だと思っていたようで、私が中学に入ると、『大学受験では巻き返しなさい』と、中学受験以上に口酸っぱく偏差値を気にし始めました。かつ、ことあるごとに自分が早慶に落ちたという話をしてきて、私に自分以上の大学への進学を望んでいるようでした」(Aさん) 学歴という呪縛から逃れたかったAさんは、京大志望のふりをして、同志社大の合格を勝ち取った。親からは「浪人」を要求されたが、「もう勉強したくない」と関東を脱出した。 「とりあえず、関西の国立大学を第一志望にすることで親を納得させました。京大はダミーで、学力に見合う“本命”は同志社。いずれにせよ、東京にいたら東大か一橋じゃないと家でグチグチ言われそうだったし、とにかく親から離れたかったというのが本心です。私にとっては同志社で十分満足しているのですが、親からしたら“普通”扱いです(笑)」(Aさん)
明治大は「受かって当たり前」扱い
20代男性・Bさんの出身大学は明治大で、現在は大手メーカーに勤務している。父親は東大卒で弁護士。母親は慶応大卒の国家公務員、一回り上の兄は東大卒の商社マンだ。兄が優秀ゆえに、親からはいまだに「お前は出来が悪い」と言われているという。 「子供の頃から、親も兄弟もエリートという姿を見慣れていたので、自分も『遺伝子はもらっているんだし、自然とああいうふうに頭がよくなるかな』と思っていましたが、まったくなりませんでした(笑)。 親から、勉強するよう厳しくプレッシャーをかけられたことはないのですが、よくため息はつかれていましたね。『お兄ちゃんは優秀なのに、なんであなたは……』みたいな感じです。僕は、頭がいい親の子が、自動的に勉強する、あるいは勉強ができると思ったら大間違いということを証明しています。 明治には現役で入学したのですが、父と兄にとって、明治は『現役で行くところではなく、後がない浪人生が受けるところ』という認識らしい。僕は目一杯頑張ったんですけどね……。たまに実家に帰ると、父から何かと『お前は出来が悪い。自分の子供とは思えない』と言われます。慣れないですね」(Bさん)
「なんでこんなところに?」面倒だった他人の目
現在大手IT企業に勤める20代男性・Cさんの父親は、東大卒で一部上場の大手メーカーに勤務、母親も東大卒の公認会計士だ。Cさん自身は日本大学を卒業したが、自分の人生を振り返ると「勉強しなさい」と言われたことはないそうだ。 「親が東大卒だとわかると、『子供は大変じゃない?』みたいなことをよく言われるんですけど、ウチはなかったですね。『東大に行きなさい』とか言われたことはないし、『勉強しろ』と言われた覚えもないです。放任でした」 父親は地方公立進学校、母親は東京都内の中高一貫女子校の出身と、それぞれ東大に入るまでの道筋は異なる両親だったが、Cさんの進学を巡っては「基本的に本人の意思を尊重」。勉強が好きではなかったCさんは、区立中から自由な校風の都立高に進学した。
面倒だったのは、親ではなく「東大卒の子供なのに……」という、他人の目だったという。 「両親が東大卒だと知ると、大学受験までは『受験大変だね~。やっぱ東大行くんでしょ?』と言われるのが鉄板ですし、日大に入ったら入ったで『なんでこんなとこいるの?』とめちゃくちゃ言われて、残念な人扱いされました(笑)。別に親は親、自分は自分だと思うんですけど、やっぱり親が東大だと、子供も東大に行って当然みたいなイメージがあるんでしょうね」(Cさん) 超高学歴の親を持つ子供ならではの悩みは、家庭の内外に起因するようだ。(了)