HistoryはHis Story

 私たちが歴史として学んできた出来事は全部His story「彼(勝者)の物語」であるそうだ。それは前から聞いてはいたがNHKの大河ドラマ「八重の桜」を観ていて確かに自分の知っている明治維新と言うのは、勝者の歴史そのままだと感じるのである。明治維新を成し遂げた原動力になった土佐に生まれたことを誇りに感じてきたが、その陰には多くの敗者が存在し多くの悲劇が現実として起こったのである。今思えば仕方なかったといえばそれまでだが、やはり会津の悲劇は知っていたつもりの私を打ちのめしたのである。泣きそうになった。
 学生時代、東北に行きたいと思い知人に話したら「特に会津地方は戊辰戦争板垣退助が多くの戦功をあげたところで逆にいえば、それだけ土佐人が今でも憎まれているところだからもし行ったら土佐人だとは言わない方が良い。」と聞かされた。その時はそんなに思わなかったが、このような事をこの地方の人にしたのだったらそれはDNAの中に今でも「土佐人憎し」などと思っているかもしれない・・・、と思うのである。私の近所には板垣退助の住居があったと示されている碑もあるし、ある商店街ではもう使われていない板垣退助の肖像の入った100円札を街おこしに使ったりしている。はっきり言えるのは土佐人が持っている板垣退助像と会津の人々が持っている彼の印象は全く違うという事だろう。
 逆に2年ほど前だったか民主党の震災担当大臣(福岡出身)が宮城県の知事にあいさつで横柄な態度を取り辞任に追い込まれた事があったが、一部の報道は「だからやはり東北人は九州人が嫌いなのだ・・・」みたいな話を聞いた。それから言えばもしなにか高知の人間が東北、特に福島県などで間違いでも犯したら昔の話をほじくり返されて、非難されるかも知れないということかもしれない。
 しかし、今の私にとっては東北は大変遠い。でも交通機関も大変不便な明治初期に、何が土佐の私の先祖たちを遠い東北までの戦い(人殺し)に駆り立てたのだろう。それがあったからこそ明治維新があって今があるのだ!というのは歴史学者の第三者的身勝手だと思う。もっと声をあげて歴史を良い方向に変える積極的な運動をすべきではないか。無知な庶民を歴史から啓蒙し、「土佐人は戊辰戦争でとんでもなく東北で悪い事をしているから、東北が震災で困っている今こそ罪の償いに行くべきではないか!」などの声は全く上がらない。140年も前のことでナンセンスなのだろうか、高知の代議士など自分の事でいっぱいでそんなことも思わないかもしれないが、私は土佐人として東北に行きたくなった。まさしく勝てば官軍で「歴史は勝者の物語」である。