山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう・・・

  
   今回は最近読み直している夏目漱石の「草枕」の冒頭を借用いたしました。学生時代読んだ時難しかったが感想でしたが、作者がなくなった年頃になって読むとまた新たな感慨があります。高校時代、恩師が漢文や古典を教えてくれましたが、あまり熱心には聴いておりませんでした。でも時折恩師自身がその作品に感動して、熱き思いを伝えていたのを覚えています。人間としての素養より「入試対策」のみで教科書や参考書を読んでいた私でした。いま思う事は作者の夏目漱石自身が、隣の県の松山で100年ほど前学生達と教鞭をとっていたが、当時の学生達は自分達の先生がこのような巨匠になろうとは夢にも思わず、ただその日の授業を受けていただろう、ということです。
その学生達も夏目漱石が有名になったときに、習った事をきっと誇りにした事でしょう。
   でも私は一人一人子供や学生の頃の恩師を思い出すと、皆さんそれはそれはすばらしい「先生」でした。でもその時は何も分らず、ましてやありがたみなども分りませんから、勉強以前のことで迷惑を掛けた事もありました。そんな反省をしながら人間は成長をしていくのでしょう。

    身近な「先生」は何も学校の先生だけではなくて、一番身近なのは親でしょう。会社の上司や先輩などもそういう見方ができます。素直にその教えを受け入れがんばっていけば、道も開けてくると信じたいですね。
    


    最近、世の中であまり良いニュースを聞きません。ワールドカップも勝てないまま終わってしまいました。何か原因があるはずです。社会面に目を向けると年端も行かぬ近所の子を、また高校生の息子が親に注意されたからといって家に火をつけ、母親や兄弟を簡単に亡き者にしてしまう。何か原因があるはずです・・・

    今回も取り留めのない文章になりましたが、たまには昔読んだ本を読み返すのも自分を見つめ直す上でいいものです。




山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
 智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう・・・