新聞投稿 掲載 7月12日 高知新聞

政治家諸氏よ、「山月記」に学べ


参議院選挙を前に、また新たな閣僚の事務所経費の問題が浮上している。多くの国会議員の中で閣僚に抜擢されるくらいだからきっと優秀な人だと思うが、自ら命を断った前農相にしろ彼らも私達と同じ人間なのだと最近痛感している。
 中島敦山月記を読み返していた。誰もが持ちうる「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」が重く書かれている。学生時代教科書にも載っていた名作であるが、その真意は当時分からなかった。しかし、主人公と同じような経験をし人生を歩んできた今、その深い意味が理解できるのである。
 「政治屋は次ぎの選挙の事だけ考え、政治家は次ぎの百年を考える」という有名な言葉があるがその政治家も我々と同じ「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」を持つ同じ人間である事を忘れてはならない。そして誰が人間の弱点を超越し、本当に百年後の日本を考えている人かどうかを、投票日までにじっくり吟味したい。


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