塾という「麻薬漬け」

  先週は期末試験の真っ最中で範囲内の予想問題を多くやらせていた。中学生に関して試験範囲では大切なところは限られているしまた、学校でもらったプリントからもそれがそのまま出題されたりするので、その両方を答えを覚えるほどやっていれば間違いなくいい点数は取れるが、現実はなかなかうまくいかない。それが中学生だから我々の塾が成り立っているのだろう。
 塾の中には試験中毎日、生徒を教室に缶詰にして問題をやらせて点数を上げさせ、それを塾の宣伝文句にしている所も少なくない。私も最初はそれで結果が(点数)がよければいいと思ったが、気がつけば生徒は塾でやるだけで家では何もしなくなっていたのである。ふと気がつくと、試験がある度に生徒は何も準備ができない、塾だけに勉強を頼る人間にしてしまっているのだった。これって一種の「麻薬漬け」ではないかと・・・塾が無ければ何も自分で勉強が出来なくなってしまう生徒を、作っているのではないかと・・・自問自答した。いくら成績が上がったとしても、こんな生徒が高校に行ったり社会に出て、自分で資料を集めたりしての勉強できるわけがないと思った。多分その事はどこの塾の先生も、お気づきであろう。それって本当に生徒を育てている事だろうか・・・
 塾の使命として、試験のためのポイントと最低限の資料は与えて、そのやり方を教えるくらいで後は生徒に任せるようにしている。だから余計な塾での勉強時間などは設けていない。それで自分で出来るものは自分でノートをまとめたり、こちらの指導どおり勉強し成績を上げている。逆に自分で出来ない者は、お金をいただいて塾で勉強してもらっている。最初はその時間が多くても、だんだんやり方を覚えてもらい、その時間は少なくしている。でもいくら塾でやっても概して自分でやれない生徒は、成績がやはり伸びなくて「塾が悪い」と言って、辞めていきがちだ。その後ひょっとして、「麻薬漬け」のような塾に行っているかも知れない。でも自分でそこでもやれなければ一緒であろう。するとまた「塾が悪い」となるのである。何が本当に良くないかは私は分かっているので、わが子の教育や社会教育と同じように、塾生に関して同じスタンス・考え方で臨んでいる。過ぎたるは及ばざるが如しであろう。
  でも、「きれいごとばっかり言うけど現実はそんなに甘くはないから、缶詰にしてやっているんだ!」という声が聞こえてきそうである。そんな先生方に「もし私のように悩むのであれば、一度私のやり方でやってみてください。もし悩みも何にもしないで缶詰授業を最高の事と信じてやっている人には、私の話はとても理解しがたい難しい話でしょうから、聞き流していただければ結構です。」とお話するだろう。
 本当の自立学習は、教える者の自立によってこそ真に確立されるのである。