旨い味噌汁の作り方

 いつも見る経済番組でロングセラー商品の紹介をしていた。今回は味噌のメーカーの商品が紹介されていたが、そのメーカーは今では普通になっているだし入りみそを最初に開発し販売したメーカーで、発売以来この30年間ロングセラー商品としてその味噌メーカーを支えているそうだ。確かにだしが入っていれば味噌汁を作るには手間が要らず簡単に作れるが、その商品ができたきっかけは何と消費者からの苦情からだったと知って驚いてしまったのである。
 ある消費者からその会社が旨いと宣伝している味噌で作った味噌汁が、まったくおいしくないとのクレームが開発の発端だったのであるが、その旨くない味噌汁の原因はなんと味噌汁を作る時に、だしを取らずただ味噌だけをお湯に溶かして作っていたからだったのだ。今思えばただあきれるがそうだと分かった時にこのメーカーは、その苦情に真摯に対応して味噌汁を作るときにだしを取りそれに味噌を入れて作ることを知らない消費者が他にもいるだろうからと、だし入り味噌を考案し製造販売したのである。普通なら「そんなことも知らずに料理をするな!」と言われるところかもしれないが、旨いと聞いて買った味噌で作った味噌汁が驚くほどまずくて、その主婦はひょっとしたら新米主婦だったのかもしれず、苦情をメーカーに出すくらいだからよほど頭にきたのだろうと推測する。でも逆に考えれば消費者の無知が、ビジネスチャンスになりうるという話にも取れなくはない。
 さもうどん玉を買ってきてだし汁を作る時お湯にしょう油だけ薄めても、うまいうどんのだしなどできるわけはないが、その苦情を送った主婦は味噌汁の作り方も教えてもらえないような孤独な環境だったのか・・・と思ってしまうのである。さらに今後味噌にはだしが入っているのが当たり前となってしまったら、将来味噌汁を作る時、だしを取らなければならない事を知らない日本人が増えるかもしれないとも心配になった。
 私は朝はご飯でもパンでも味噌汁がないといけない人物であるから、だしや味噌にはこだわりがある。さらに塩分も気になるからかなりの薄味に心掛けているが、料理人の知人に教えてもらった作り方で、だしもかつお(たまにいりこ)と昆布を使い味噌も麦、米の赤白を混ぜて作っている。するとそれぞれを単品で作った時より少ない量でも味がより濃厚に出るようでうまい。だからかたまに外食して味噌汁を飲むと濃ゆくて飲みきれない時がある。ぜひこの知恵は子どもに伝えたいとおもう。
 毎日作る味噌汁はやはりその家庭を代表する味だと思うから、よりおいしく作ろうと思うのなら、きちんとした作り方をまず習得して自分で毎日実践するしかないと、普通の人なら気付くだろう。それは勉強とまったく同じように思う。仕事に就いても人生は一生勉強である。学ぼうとする心は持ち続けたい。だから生徒には「コツコツやってゆく努力こそ尊い」と伝えている。今は勉強と言えば学校で学ぶものしか浮かばない生徒たちも、将来成人して社会に出た時きっと同じ気持ちを持つだろうから、その時にでも私の言葉を思い出してほしいと願うのだ。それは私が塾をする大きな目的でもある。塾に行かなくて学校の勉強はあまり分からなくても、味噌汁の作り方くらいは知っている日本人にあなたのお子さんは育ててください。