塾長の資質と誇り

 今年の夏はいつ来るのだろうか、梅雨が我々の生活には必要な事は十分承知しているが、こう毎日曇りや雨の日が続くと、気持ちもうつむきになってくる。この長く続くはっきりしない天候の原因は、日本の上空を流れるジェット気流が、例年とは違って大きく蛇行しているかららしいが、それがいつまで続くのかよくわからないようだ。しかし季節は確実に動いているし、きっと月末頃には、あのギラギラした夏の日差しが見られることを期待したい。

 塾恒例の夏期講座も来週から本格的に始まる。塾によっては朝8時から夜の10時まで日曜以外やっているとか聞くが、いくら受験生でも一日14時間は塾では預かっていないだろう。しかし、昼食と夕食を持参させて塾には、そのためのダイニングホールまでがあるというから、やはり大手塾の考える事は違う。いっそのことそこでレストランも始めれば、食事代まで売り上げになるのではないだろうか。

 大きな施設があり大勢のスタッフが関わり、その塾は成り立っている。でもその塾の設立者が塾を始めた頃は、そんな施設やスタッフはいなかったであろう。塾長の熱意と小さいながらに勉学に燃えた、生徒たちの塾だったに違いない。私はその初心の気持ちを35年たった今でも忘れないために、小さな教室で私がすべてを指導監督する方法でやっている。ある大きな塾経営者に「歳も取ってきてその昔ながらのやり方はきつくないですか?」と聞かれたことがある。聞かれた真意は分かったが逆に私は「生徒一人一人の顔と名前が分かる昔の方が、塾長として充実していませんでしたか・・・?」と聞くと苦笑いをしていた。もう彼は教える人でなく、人を管理し飯を食わせる人間なのである。

 当日でもキャンセル変更が出来て自分の都合に合わせて塾の来られる方が、学ぶ生徒には絶対便利であるし、塾での様子を直接私から聞けば親は一番安心できると思う。そして一度受け取った授業料も、返金要求があればそれまでの授業分を差し引いて即返金している。その方が生徒に喜ばれるから、私はそのやり方を貫いているだけなのだ。では他の塾はなんでこの方法をやらないのか、生徒に一番便利な方法はやっている方には一番不便だからであるし、塾長がマメで真面目でないと、保護者へのこまめな連絡などは到底できないだろう。

 でも私はそれが続けられている、35年間も。その事だけでも私は塾を続けてきて良かったと思うし、塾長としての資質と誇りは、大きな塾の塾長と比べても全く遜色ないのだ。