大河ドラマが面白く、松重豊はすごい!

 徳川家康の家臣の中で一番の長老である石川数正の出奔は徳川家康のドラマでは避けては通れない事実であるが、近年新たなそれにまつわる古文書などが発見されて、石川数正はただの裏切り者ではなかったという事実がクローズアップされてきて、そのことがドラマでも描かれていたのである。その役を繊細で居ながら重厚に演じた俳優の松重豊は、もはや「名優」と言っても過言ではないだろう。一昔前はやくざや犯罪者役が多かったように思うが、テレビの食レポ番組では独特の彼の持ち味を出して、いかにも現代のサラリーマンの食事の様子を伝えていた。一方で歴史番組などのナレーターなどもやっており、私は彼の時代劇でも十分に通用する演技力を、感じていたのである。しかし彼はきっと我々が驚くような新しい演技の境地を開くと思う。寅さんのような三枚目で少しペーソスが漂う、泣き笑いの中年男性とか見てみたい。

 役者になろうと思う人は、やはり長いセリフが覚えられないといけないし、想像力そして創造力が必要な厳しい競争の世界でもある。そしてやはり身長は180センチ以上は必要かもしれない。

 知人で家業を嫌い役者の道に進んで少し目が出始めた頃に、家業の親父さんが50歳代前半で急逝、泣く泣く俳優を辞めて家業を継いだのであったが、彼との会話は今思えばお芝居のような世界だったようにも思う。自分を殺して人を楽しませる奴だったから多くの友人がいたのだが、家業をしながら頑張って無理もしたのかもしれない。自分をどっか演じていたような気もするし、それにだんだん疲れたのか深酒をするようになり彼も50代で他界してしまった。芝居のような人生だったかもしれないが、彼はずっと私の中に若いまま生き続けている。